コンテンツへスキップ

沢搬出訓練(西山谷)に参加

兵庫県連主催の沢搬出訓練(毎年7月の第2日曜に開催)に参加してきました。私たちの会からは大所帯となる5名参加です。午前中は要求者のスケッドへの収容方法とチロリアンブリッジ(斜張り)、最後にフィックスロープの張り方を全員参加で学びました。
沢搬出訓練(兵庫)
要求者を古テントやフライシートなどで包むところからスタート。解けにくく摩擦で溶着しにくい結び方のシープシャンクとクローブヒッチを多用します。コレまでも講習で習っていたけど突然言われると出来ないものでして・・・ちゃんと訓練しておかねば!とあらためて思いました。
まず要求者の足元を固定するため120cmスリングを途中クロスさせてから踵・土踏まずを通るように廻し、クロス部分を引き上げてスクエアノットで結びます。着物の帯の結び方と同じ要領のようですが、着物を着た経験が無いのでできません。動画を参照してください。

沢搬出訓練(兵庫)
でっもってシートで要求者をくるんでいきます。センター出ししたロープ(7mmくらいが良さそう)を途中、ヒザ・股下・胸下にカナビラや平たい小石を巻き込んで足元から固定しているロープをクローブヒッチで体の中心付近に固定していきます。胸下からは左右対称となるようにロープを分け、両肩下あたりに1箇所クローブで固定。頭の上を足元と同じようにクルクル巻いてクローブで固定します。これでシートへの終了は完了。沢搬出訓練(兵庫)

上の写真がシート収納の最終段階。ココまで出来たらスケッドに要求者を移します。

沢搬出訓練(兵庫)

ここの動画では足元にロープセンターを置いていますが、コレは逆。正しくは頭側にロープセンターを置いてシープシャンクで固定&安環(バックアップに使う青いロープ用)をセットします。動画の後、ちゃんと正しくセットしました。足元側はスクエアノット(着物の結び方で結び目が横になるようなら正解)で結び、あまったロープはダブルフィッシャーマンで解けないように固定。

我々講習者がスケッドに要求者を移動させている間に気がついたらチロリアンブリッジが出来上がっていました。チロリアンブリッジのコツは張り過ぎないこと。支点が崩壊する可能性もあるので初めからピンピンではなく多少弛んでいるほうが良い。今回の要求者役は小柄な女性だったがロードセルで加重測定したらロープに掛かる負荷は200キロ前後ある。下の写真のように要求者をぶら下げたあとで現場の水に浸からないように、1/3システムで水面ギリギリまで張りなおす。
大人一人で引っ張れるのは30キロちょっとが限界らしく、1/3システムでも今回は5名で綱引きの要領で息を合わせてテンション掛けなおしました。
沢搬出訓練(兵庫)
沢搬出訓練(兵庫)
カナビラ&プーリーと見たこと無い機械(たぶんクレイムハイストで代用可能だと思う)で1/3システムを作っていました。支点カナビラをプーリーに変更すればもうちょっと楽になると思うけど、ふだんプーリー持ち歩いて無いからね・・・。

下の写真は、バックアップ用の青いロープを、支点を作ってムンターで加重操作してしてるところ。下りなどでスケッドを下ろして行くときにムンターが何かの拍子に解除されたときのためにクレイムハイストでバックアップを取っている。実際に操作するときはバックアップ用のクレイムハイストに荷重が掛からないように引き上げつつムンター操作も行うので、安全のためですが少々手間のかかる部分と思われます。クレイムハイストに荷重掛かってしまうと、解除するのに一苦労しそうで大変です。
沢搬出訓練(兵庫)

下の写真は終端ボウラインノットでフィックスロープを張ったところ。ロープに結び目をつくるとロープ本体の強度の50%しか出ない。そのため端末結び目に荷重を掛けないようにロープを木の後ろでクロスさせてココに加重を掛けるようにしている。結び目はロープが解けない程度で良い。しかし立ち木などに支点をとることが多いが揺れてクロスしているところがズレたりすると結び目に支点がかかるので一方向への加重に強いボウラインノットか、もやい結びで結んでおくこと。
沢搬出訓練(兵庫)

さて、午後からは西山谷に入り受講生が午前で学習した内容を実践して行く。場所も狭いし水平ではないためかなり厄介な作業と実感させられる。搬出班・フッィクスロープの工作班・チロリアンブリッジ工作班に分かれそれぞれ講師指導のもと作業に当る。
私はチロリアンブリッジ工作班でした。上側の支点を大きな木にタイオフで作り、安環2枚にシープシャンクでスタティックロープを結び付けました。その後、搬出班に合流してチロリアンブリッジに要求者を備え付けます。滝の真上での作業となるためテラス状になっているとはいえ非常に足場が悪く、各自セルフを取りながらの作業です。ただし大勢が一箇所に集中し、要求者を水に漬けてはいけないと悪戦苦闘するので作業しにくいことこの上ない。
沢搬出訓練(兵庫)
沢搬出訓練(兵庫)


沢搬出訓練(兵庫)
沢搬出訓練(兵庫)
落差のある滝をチロリアンブリッジで越えて一安心と思っていたが、ここから狭い山道を要求者を移動させていく。フィックスロープ工作班がロープを張ってくれているが、ほとんど張っていなくて非常にこころもとない。とにかくセルフと取っているが、本来1人しか歩くことは無いルート沿いに要求者を搬出して行く。とくに谷側を運搬する人たちが落ちそうになったり何度も落石をおこしたりするので冷や汗モノで搬出していく。もう少し広い登山道を使えるなら今回の搬出方法でも大丈夫だろうが、狭い場所ではスケッドにビレイを上手く活用して前後をさせるなりしながら搬出するなど工夫が必要かもしれない。ところどころ訪れるUP・DOWNで頭と足を回転(頭が常に上に来るようにする)させるときなどとにかく大変だった。

今回の訓練を通して、救助の大変さをあらためて実感した。しかも普段の装備では対処できないことも予想される。安全に注意してケガ・事故を起こさないことが大前提だと思う。それでも万が一のとき仲間をプロの救助者に連携できるまで何かできること、工夫できることがあるのではないかと考えるため、今回のような訓練を受けていることには意義があると思う。沢など一般の山よりも危険度の大きい場合は自分なりに装備や技術をよく点検して山行に臨みたいと思う。